Arduinoの互換品は楽天やAmazonでも安く入手できるため、出費を抑えたいときには強い味方になります。 更にアリババグループのAliExpress では格安の互換品が半額以下で入手できます。

 今回はAliExpress から格安互換品を入手してみました。

正規品との違い

 互換品といっても正規品とほぼ同じ構成の完全互換品から、格安なかわりに乗っているチップ等が違う互換品もどきといった感じのものまであります。

マイコン

 メインとなるマイコンは正規品ではDIP版ですが、互換品にはSMD(表面実装)のものが多くあります。正規品にもSMD版がありますが、マイコンの交換ができなくメリットが無いためあまり使われていません。

左:DIP版マイコン 、 右:SMD 版マイコン

 通常のDIP版ATMEGA328P は28 ピンですが、SMD 版には32 ピンのものがあります。

 増えた4 ピンのうち二つはGND とVCC、残り二つにADC6 とADC7 が割り当てられています。つまり SMD 版32 ピンのATMEGA328Pはアナログ入力を二つ増やせます。

 UNO のアナログ入力はA0~A5までの6 つですので、余分の二つのアナログ入力は使われていません。 互換品の中には A6、A7 入力用のピンをつけているものもあります。

 マイコンに関してはAtmel(Microchip Technology)製ATmega であればDIP版とSMD版で基本的には性能に違いはありません。

 しかし、格安Arduino互換品の中にはこのマイコンも互換品が使われているものもあるようです。 LogicGreen (深圳)製のLGT8F328P という互換品があるらしいです。

USB-シリアル変換

 USB-シリアル変換は正規品ではATmega16Uですが、格安品は大抵WCH社(南京)のCH340Gが搭載されています。

 外観上の違いとして、チップの形の他に、16MHz の水晶振動子、正規品にはあるUSB ポートの近くの6 ピンのICSP が無いことで区別できます。

左:正規品 、 右:格安品(CH340G搭載)

  水晶振動子を余分に付けてもコストが大きく下げられるくらい、チップの価格が違うのでしょうか。

 CH340G が搭載されている互換品は、Windows10 では問題ないですが、以前のバージョンのWindowsやMacOS ではドライバを別にインストールする必要があります。

格安互換品

 今回見つけたのはWAVGAT というブランドのArduino UNO 互換品(もどき)のWAVGAT UNO R3 で製品価格¥269 、送料¥38の計¥307 の品です。正規品だと¥3,000 以上するので約10分の1です。

検索

 AliExpress で”UNO R3” で検索をかけるといくつものショップで互換品が出品されています。 最安値は日々変わりますが、私が検索した時点(2020.4.14)での最安値がWAVGATの製品価格¥269 、送料¥38の計¥307 でした。

2020.4.14時点の商品ページのスクリーンショット

注文

 日本からの決済方法は銀行振込かクレジットカード(VISA or MasterCard)払いですが、個人で買うなら実質カード決済一択でしょう。

 支払いはAliExpress に行い、商品到着を確認後AliExpressからショップに代金が支払われます。

 AliExpress は世界規模の大手サイトですので、セキュリティもしっかりしておりカード情報を入力しても問題はないはずです。

 それでも中国のサイトということで不安になる方はVプリカを利用すれば良いでしょう。 入金した金額以上が決済されることは無いし、カードをロックできるので知らない間に決済されたということも無くせます。 但し、入金に手数料がかかること、3ヶ月以上使わないと残額の範囲内で維持手数料が引かれます。

配送

 ’20.4/14 に注文して5/7 に到着しました。 3 週間ちょっとでコロナ禍の中でも正常に配送されました。

台湾経由で3週間かけて送られてきた

  2020年4月の時点ではAliExpress で低価格・小サイズの品物を買って一番安い配送方法を選択すると大抵”菜鸟超级经济-燕文(Yanwen Economic Air Mail)”が選択されます。

 ”菜鸟”(読みは無理やりカタカナを当てると「ツァイニャオ」)は中国語で”ルーキー”とか”新人”とかいう意味で、AliExpress のページを機械翻訳しているとたまになんの脈絡もなく”ルーキー”とかいう言葉が出てきて意味が通じないことがありますが”菜鸟”を直訳したものです。

 ”菜鸟网络科技有限公司”は2013年にアリババグループが主導して設立された物流会社で、実際の配送は既存の物流会社に委託してAIを駆使してどの物流会社にどのタイミングで運送させると最も効率的かを出して采配しています。

 実際にはアリババグループの巨大な資力を背景に各物流会社は相当厳しいコストで請け負わされているのではないでしょうか。 僅か34 g の小さな荷物ですが中国からの送料¥38 で日本国内の配送業者には幾ら渡っているのでしょうか。

外観

見た目

 ぱっと見た感じ、電源ジャックが少し斜めに取り付けられている以外はしっかり作られているように見えます。 ピンソケットはピンを入れるとガリガリといった感じで固いですが、しっかり接続されます。

載っているチップ等

マイコン

 マイコンは32ピンのSMD でした。 マーキングには ”WAVGAT AVGA328P AU 1918” と記載されておりました。 商品ページのタイトルには”ATMEGA328P-AU”と記載があり、製品説明にも”Atmel Atmega328P-AU microcontroller was adopted”とあったのですが、サードパーティ品ではないでしょうか。

USB-シリアル変換

 USB – シリアル変換にはCH340G が使われていました。

動作確認

ドライバーのインストール

 WAVGAT UNO R3 を使うにはArduino IDE に追加で独自のドライバーをインストールする必要があります。

 https://drive.google.com/open?id=10gwrG9uTDwaEO-7EudsmBkfgdcyrcABI から設定ファイルをダウンロードして解凍します。

 rarファイルなので、Windows10 の標準機能では解凍できません。 解凍ソフトを持っていなければこちらでzipに変換できます。

 解凍した”update”内には”hardware”と”libraries”のフォルダがあります。 フォルダごとマイドキュメント内の”Arduino”フォルダ内にコピーします。 ”libraries” フォルダは既にあると思うので、中身を統合します。

  Arduino IDE を立ち上げて『ツール』⇒『ボード』を確認すると、下の方に”WAVGAT 〇〇”が追加されていることが確認できます。

Blink

 まずはBlink を試してみました。 Arduino IDE のスケッチ例に入っているBlink スケッチ(『ファイル』⇒『スケッチ例』⇒『01.Basics』⇒『Blink』)を呼び出しました。 ボードを”WAVGAT UNO R3”を選択してから、スケッチを書きこみました。しかし、

いきなりエラーメッセージ!
 一瞬(…かなりの時間)焦りましたが、シリアルポートの番号が変わっていたのに気づきませんでした。ポートを設定しなおして、再度書き込み、

今度は成功しました。 黄色のLED がチカチカ光っています。 少なくとも簡単なスケッチは機能するようです。

GPIO

出力

 GPIO の出力をテスターで測定してみたところ、3.3V でした。 本来のArduino UNO は5V ですので、Arduino UNO で作った回路はそのまま使えない場合があります。

GPIO(8番ピン)出力時の電圧(3.30V)

 LED の種類によっては光らないものもあるのではと思い、手持ちのLED を光らせてみました。

 白色LED を含めちゃんと光ってくれました。

入力

 ”digitalRead”の”INPUT” 及び、”INPUT_PULLUP” を確認しました。 電圧は3.3 V です。どちらも正常に動作しました。

PWM

 ネット上には3 番ピンではPWM が使えないという情報もあったため、確認したところ、 3,5,6,9,10,11 すべてのピンでPWM 出力ができることを確認しました。

3 番ピンでのPWM(128)出力(1.661V)

 但し周波数は正規品が約490Hz(3,9,10,11)と約970Hz(5,6)であるのに対しWAVGAT UNO では約1.5kHz (3,9,10,11)と約2.9kHz (5,6)と約3 倍の周波数でした

3番ピンのPWM (128)出力時の周波数(1.495 KHz)
6番ピンのPWM (128)出力時の周波数(2.92 KHz)

アナログ入力

 出力が3.3 V でしたのでアナログ入力に3.3 V を入れたところ、4064 の値となりました。 つまりこのWAVGAT UNO のDA変換の分解能は12 ビットということになります。

A5 に3.3 V を入力したときの読取値

温湿度センサー

 『ArduinoのデータをEXCELで取得する』で作成したスケッチを書きこんで温湿度を測定してみました。 温湿度センサーDHT11 は仕様によると3.3 ~5.5 V で動作するので測定できるはずです。

温湿度センサーの測定結果(25.5℃、52%)

 正常に測定できました。
 3.3 V で動作するセンサーは使えそうです。

SDカード

 『ArduinoでmicroSDカードを使う』で試したmicroSD カードモジュールを試してみましたが、動作しませんでした。 このモジュールは5V をSD カードの3.3 V に変換する回路が備わっているので、3.3 V では動作しなかったと思われます。
 変換回路のない単純なmicroSD カードスロットであれば使えるのかもしれません。

最後に

 扱ってみた感想ですが、Arduino 初心者が手を出すものではなかったです。
 さくっと書きましたが、まず専用のドライバーを入れなければならないことが分からず立ち往生しました(よく読むと製品ページに書いてあったのですが、英語なもんで)。
 Arduino と仕様が違って、Arduino で作ったスケッチやネットにあるArduino の解説がそのまま使えず、WAVGAT の仕様に合わせて作り直さなくてはならない、更にトラブルが起きても情報が少ないため、同じものを作るのにも時間が数倍かかりそうに感じます。
 今回¥307 、缶コーヒー3本を諦めたと思ってこのArduinoもどきは棚の奥にしまわれることになりそうです。

 

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